どれほど味が優れていても、食品安全の土台が揺らいではならない。サワガニをはじめとする淡水生物を口にする際、消費者と調理者が等しく心に留めるべきなのが、農林水産省や厚生労働省が定める衛生管理指針だ。
淡水のカニ類には、肺吸虫の中間宿主となる性質がある。中心部まで75℃以上で1分間以上加熱することが感染予防の基本原則とされているが、丸ごと揚げる唐揚げにおいては、骨や殻の熱伝導率の違いを考慮し、十分な加熱時間を確保することが強く推奨される。「半生で身の柔らかさを残す」といった調理は、サワガニにおいては絶対に避けなければならないタブーだ。
また、採取する河川の水質や採取地の環境基準にも配慮が求められる。生活排水の影響を受けない清冽な上流域で獲れた個体を選び、適切な泥抜きを行うこと。自然への敬意と科学的な衛生知識の両輪があってこそ、日本の豊かな川の幸を未来へと受け継ぐことができる。