大手自動車メーカーやIT大手が華々しい満額回答を連発する一方で、日本の労働者の約7割を占める中小企業で働く人々にとって、春闘のニュースは別世界の出来事だ。原材料費の高騰分を取引価格に転嫁できない下請け企業は、賃上げ原資を確保することすらままならない。物価上昇のスピードに給与が追いつかないという、実質賃金のマイナス傾向は依然として多くの家庭を苦しめている。
「給料が上がった実感なんて、全くありません」。都内の町工場で働く40代の男性はため息をつく。メディアが煽る「脱デフレ」の熱気は、彼らの元には届かない。取り残された人々の不満は静かに、しかし確実に社会の底流で澱のように積もり続けている。