安岡力也さんといえば、身長187センチの屈強な体躯と鋭い眼光を誇り、映画『不良番長』シリーズやヤクザ映画などで本物の迫力を見せつけていたバイプレイヤーでした。「芸能界で絶対に喧嘩を売ってはいけない男」の筆頭格として誰もが恐れていた存在です。そんな本物の武闘派が、なぜ貝殻を身にまとって歌い踊るキャラクターを演じることになったのか。その引き金を引いたのは、若き日のビートたけしさんでした。
当時、土曜8時の熾烈な視聴率戦争(いわゆる「土8戦争」)において、TBSの『8時だョ!全員集合』を猛追していた『オレたちひょうきん族』の現場では、毎週のように破壊的な新アイデアが試されていました。名物コーナー「タケちゃんマン」の悪役ゲストとして安岡さんをキャスティングする際、会議室で飛び出したのが「あの力也さんにホタテの格好をさせたら一番怖いし、一番面白いのではないか」という突拍子もない発想でした。
関係者の回想録や当時のインタビューによると、当初オファーを聞いた安岡さんは「ふざけるな」と激怒寸前だったといいます。しかし、ビートたけしさんが直接楽屋に出向き、「力也さん、本物の強い男がこれを全力でやるから日本中がひっくり返るんです」と真剣に口説き落としました。さらに、安岡さんが兄貴分として絶対の信頼を寄せていた内田裕也さんの「力也、ロックンロールだぜ。お前がやらなきゃ誰がやるんだ」という後押しが決定打となり、希代の怪キャラ「ホタテマン」が誕生しました。