見えにくい苦痛を社会に伝えるメディアの力も増している。NHKオンデマンド等で配信されている数々の医療ドキュメンタリー番組は、難病や過敏性腸症候群に苦しむ患者たちの日常をありのままに捉え、大きな反響を呼んできた。画面越しに明かされるのは、トイレの場所を常に確認しなければ外出できない恐怖、仕事や学業を断念せざるを得ない葛藤、そして周囲の「たかが腹痛」という無理解に対する苦悩だ。
こうした医療ドキュメンタリーの映像作品は、病気を抱えながら社会の第一線で戦った安倍氏の姿とも重なり合い、単なる個人の病気ではなく「社会全体で支えるべき課題」であるという意識を浸透させた。当事者の告白と最新医療の現場を追ったドキュメンタリーの力は、差別や偏見を無くすための貴重な社会的アセットとなっている。