手縫いの成否を分けるのは、縫い手の器用さではなく道具の相性だ。硬く厚みのあるカツラギやヘビーオンスのデニムに薄地用の細い針を突き刺せば、指を痛めるか針が折れる。逆に、撥水加工された薄手のアウトドアナイロンに太い針を通せば、二度と塞がらない無骨な穴を開けてしまう。
デニムや帆布には「メリケン針」の6号から7号、糸は耐久性に富んだ30番手の太口ポリエステルスパン糸を合わせる。綿糸ではなく合繊糸を選ぶのは、泥水や摩擦による糸切れを防ぐためだ。一方、ナイロンジャケットやウィンドブレーカーに縫い付けるなら、9号前後の細針に60番手の普通地用糸を選び、生地の繊維を切り裂かないよう慎重に縫い進めなければならない。裏面に薄い接着芯をあらかじめ小さく貼っておくと、薄地特有の針穴の広がりや生地の裂けを完璧に防ぐことができる。