しこりの正体を暴くための第一歩として、動物病院で最初に行われるのが針生検(FNA:Fine Needle Aspiration)だ。細い注射針をしこりに刺して細胞を吸引採取し、顕微鏡下で観察する細胞診検査である。無麻酔かつ数分で実施でき、愛犬への身体的負担が極めて少ない。
FNAによって無核の角化細胞やコレステロール結晶が確認されれば粉瘤の可能性が高まり、顆粒を持つ円形細胞が検出されれば肥満細胞腫などの腫瘍が強く疑われる。日本獣医皮膚科学会でも、皮膚結節に対する初手アプローチとしてのFNAの有用性が広く推奨されている。
ただし、FNAはあくまで「細胞単位のサンプリング」に過ぎない。しこりの全体構造や悪性度、取り残しの有無を完全に判定するためには、外科的に切除した組織を専門機関に送る「病理組織検査」が不可欠だ。獣医腫瘍科の視点からも、切除組織を病理へ提出して確定診断を得るプロセスこそが、再発リスクや追加治療の必要性を正確に判断する唯一の道筋となる。