猫の心理状態は、耳の向きや倒れ方によってグラデーションのように変化する。動物行動学の権威として知られる今泉忠明氏の解説にもある通り、猫は表情筋があまり発達していない分、耳とヒゲ、そして尾の動きに感情の大部分を投影する。
最もわかりやすいのが、いわゆる「イカ耳」と呼ばれる状態だ。耳が真横から後ろに向かって水平に寝かされているときは、強い恐怖や警戒、あるいは激しい怒りを感じている。喧嘩の際に相手の爪や牙から耳を守るための防御姿勢であり、人間で言えば極度のプレッシャーに身構えている状態に近い。この時に無理に触ろうとすれば、防御的な攻撃を受ける可能性が高い。
一方で、リラックスして飼い主に甘えたい気分のとき、耳は自然に前方を向き、先端がわずかに外側へと開いている。YouTubeに投稿される無数の愛猫動画でも、飼い主の帰宅時に耳を正面に向けたまま喉を鳴らして擦り寄る姿が共感を呼んでいる。また、緊張を和らげようと耳を小刻みに動かす「猫のカーミングシグナル」も見逃せない。自らを落ち着かせるための微細な動きを把握できれば、不要なストレスを未然に防ぐことができる。