山腹を縫うように伸びる登山道を数時間登り、呼吸が荒くなったところで突如現れる木造の建造物。かつてなら外部との連絡が途絶え、ランプの灯りで夜を明かしたような場所で、いまや宿泊客は4K映像のリモート会議を難なくこなし、静謐な夜のテラスで淹れたてのドリップコーヒーを味わっている。
背景にあるのは、ここ数年で飛躍的に進んだ山岳インフラのテクノロジー革新だ。従来のガソリン発電機による騒音と排気ガスは姿を消し、静音性に優れる小型ソーラーパネルと次世代バッテリー、さらには地産型エネルギーを活かした小型水力発電が主流となった。電力供給の安定化により、山の上でありながらシャワーの温水管理や床暖房の稼働が可能になったのだ。
さらに大きいのが、低軌道衛星による超高速インターネットの全面普及である。どんなに深い谷間や高標高地であっても、都市部と変わらない通信環境が手に入る。これが「山に籠もりながら仕事をする」という新しいワークスタイルを完璧に支えている。