『トムとジェリー』シリーズにおいて、音楽とアニメーションの完全な融合を成し遂げた記念碑的作品が『ピアノ・コンサート』です。本作は第19回アカデミー短編アニメ賞を受賞し、シリーズ通算7度のアカデミー賞受賞歴の中でも最高峰の完成度を誇る「神回」として世界中で認知されています。
監督を務めたウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラ、そして音楽監督のスコット・ブラッドリーが手がけた構成は、まさに芸術とギャグの極致です。劇中でトムが演奏するのは、ロマン派音楽の巨匠フランツ・リスト作曲の『ハンガリー狂詩曲第2番』。哀愁漂う重厚な旋律から、熱狂的で目まぐるしいアップテンポへと展開する難曲をベースに、鍵盤の上やピアノのアクション機構の隙間でジェリーとの命懸けの応酬が展開されます。
セリフを一切使わず、音楽のリズムとキャラクターのアクションだけで物語を完璧に語りきる演出力は、80年近くが経過した現在でもアニメーション表現の最高到達点として教育機関やプロのクリエイターの間で研究対象になり続けています。