「夏休みや年末年始の午前中に、なぜイケパラの再放送がないのか?」という疑問は、ネット掲示板やSNS上で毎年繰り返される定番のトピックだ。キー局編成担当者や芸能ジャーナリストへの取材を重ねると、単なるスケジュールの都合にとどまらない、地上波再放送を阻む決定的な3つの構造的障壁が浮かび上がってくる。
第一の障壁は、一部キャストの不祥事およびコンプライアンス上の制約である。本作には全12話およびスペシャル版を通じて、膨大な数の若手俳優が桜咲学園の生徒や他校のライバルとして出演していた。その中には、後に重大な刑事事件を起こして実刑判決を受けた人物や、芸能界を契約解除となって去った元俳優が含まれている。現代の地上波テレビ局において、コンプライアンス規程は2000年代当時とは比較にならないほど厳格化されており、出演者の過去の不祥事は放送審査における致命的な減点要素となる。画面からのカット編集やモザイク処理で対応するには登場シーンが多岐にわたりすぎており、物理的な再編集コストとリスクが見合わないのが実情だ。
第二の障壁は、芸能界引退組および主要キャストの肖像権・権利許諾の手続きである。主演の堀北真希をはじめ、難波南役として絶大な人気を博した水嶋ヒロ、萱島大樹役の山本裕典、中央千里役の木村了、関目京悟役の岡田将生など、出演者の現在の立ち位置は千差万別だ。特に完全引退して一般人となった堀北や、実業家に転身した水嶋ヒロなど、当時の所属事務所を離れて久しいキャストが多数存在する。民放キー局が過去のドラマを再放送する際には、出演者本人または権利を継承する窓口との間で再放送許諾および二次使用料の分配手続きをクリアしなければならない。権利窓口が散逸している作品ほど、事務手続きの負荷は天文学的に膨れ上がる。
第三の障壁が、劇中使用楽曲と主題歌にまつわる著作隣接権のクリアランスだ。本作は『イケナイ太陽』をはじめとするタイアップ楽曲が物語と密接に結びついており、シーンごとの劇伴にも当時の洋楽サンプリングや多彩な音源が贅沢に使用されていた。パッケージ販売時の権利処理と、地上波での再放送、さらにはTVer等の見逃し無料配信における権利処理はそれぞれ別個の契約体系となっており、すべての原盤権・出版権保持者から一括許諾を得るハードルは極めて高い。