料理科学の第一人者であるJ・ケンジ・ロペス=アルト氏が提唱し、世界的なブームを巻き起こしたのが「リバースシア製法(Reverse Sear)」だ。従来の「強火で表面を焼き固めて肉汁を閉じ込める」という言説が科学的迷信であったことを、彼は実験によって証明してみせた。
肉の表面を香ばしく、芳醇なアロマで包み込む「メイラード反応」は、表面の水分が蒸発して初めて活発化する。最初から強火で焼くと、肉からにじみ出た水分が蒸気となり、メイラード反応を遅らせてしまうのだ。一方、リバースシア製法では、オーブン内の穏やかな熱風が肉の表面を適度に乾燥(ドライアウト)させる。その結果、最後の短時間加熱で瞬時に完璧なクラスト(焦げ目)が形成される仕組みだ。
赤身のグラデーションが存在せず、端から端まで均一なロゼ色に染まる断面。これこそが、科学が導き出した現代ステーキの到達点と言える。