作品を初めて観た者が抱く素朴な疑問――「なぜ服を着たまま透明化しないのか」。その答えは、作中で提示される義体(サイボーグ技術)と屈折率変化素材の高度な科学的設定にある。
設定上、全身を覆う熱光学迷彩を極限まで効果的に機能させるには、義体表面のエレメントと迷彩塗膜の直接的な接触が不可欠とされる。服を着た状態では衣類の繊維が光学的屈折を乱し、敵のセンサーや熱探知を完全に撒くことができない。つまり、草薙素子が服を脱ぐのは決して示威行動ではなく、戦場で生存率を限界まで高めるための究極的に冷徹な戦術的選択なのだ。
さらに制作陣が明かした裏設定によれば、彼女にとって「義体」はいつでも買い替え可能な機械のパーツに過ぎない。人間が服を着替える感覚で肉体そのものを捉えているからこそ、全裸になることへの心理的躊躇が一切存在しない。この徹底した機能主義と冷徹な自己認識こそが、彼女を異質のヒーローたらしめている。