医療技術が進んだ現在、歯科医院にはキシロカイン以外にも多彩な局所麻酔薬の選択肢が整備されています。高血圧症や虚血性心疾患の既往がある患者、あるいは過去にキシロカインで激しい動悸を経験した患者に対しては、アドレナリンを含まない製剤への切り替えが標準的なリスク管理として定着しています。
各麻酔薬の成分特性、持続時間、動悸のリスク度合いをまとめた比較データは以下の通りです。
シタネストオクタプレシンの最大の特徴は、収縮薬としてアドレナリンではなく下垂体後葉ホルモン誘導体である「フェリプレシン」を採用している点にあります。心臓のβ受容体に作用しないため心筋の収縮力を強めず、脈拍を急上昇させる心配がありません。心臓病の既往歴がある患者や、過去の治療で著しい動悸を経験した人の有力な選択肢となっています。
一方で、アドレナリン無添加の歯科麻酔薬であるメピバカイン(スキャンドネスト)は、薬理作用による動悸の発生をゼロに抑えられる決定的なメリットを持つ反面、血管が収縮しないため体内に薬液が吸収されるスピードが早く、作用時間が20〜40分前後と短い制約があります。大がかりなインプラント手術や難抜歯には不向きですが、通常の虫歯削合や短時間の処置であれば十分な威力を発揮します。