厳格な所作や言葉遣いが問われる時代劇の世界でも、中原の演技巧者ぶりは際立っている。とりわけNHK大河ドラマの最高峰と名高い『葵 徳川三代』で見せた凛とした佇まいは、今なお多くの時代劇ファンの記憶に刻まれている。戦国から泰平の世へと移り変わる動乱期、歴史の波に翻弄されながらも気品を失わない女性の生き様を見事に立ち上がらせた。
着物の着こなしから歩き方、わずかな襖の開閉動作に至るまで、研ぎ澄まされた所作は観る者に圧倒的なリアリティを与える。激しい感情の昂ぶりをあえて内に秘め、静謐さの中に強い意志を宿らせる表現力。NHKの重厚な歴史劇において重用されてきた背景には、こうした本物の基礎力がある。