メガホンをとったのは、独自の美意識と柔らかな映像演出で高い評価を得る松本佳奈監督だ。彼女の演出によって、登場人物たちの何気ない会話や間(ま)が、芸術的な美しさを持って画面に定着した。
撮影現場は、劇中の穏やかな雰囲気そのままに、終始温かな空気に包まれていたという。特に、アキコを静かに見守る近所の喫茶店主を演じた、もたいまさことも共演シーンでは、台本にはない自然なアドリブや笑いが生まれた。スタッフの証言によると、カメラが回っていない時間も小林聡美ともたいまさこは仲良くお茶を飲みながら談笑しており、その空気感がそのまま作品の「深み」となって滲み出ていたという。未公開のメイキング映像でも、キャスト陣が本気でスープの味に感嘆する姿が収められている。