元治元年6月5日、初夏の京都を揺るがす大事件が勃発した。過激派の尊皇攘夷志士たちが密会していた三条小橋の旅籠に、武装した男たちが乱入する。惨劇の舞台となった池田屋事件である。暗闇と悲鳴が錯綜する狭い館内で白刃を振るい、鬼神の如き働きを見せたのが局長・近藤勇率いる新選組だった。この一夜の強襲によって尊攘派は大打撃を受け、京都の治安維持を担う警察組織としての彼らの名は一気に天下へと轟くことになる。
かつては単なる治安維持部隊の暴走と見なされることも多かったが、近年の研究では政治的ターニングポイントとしての側面が再評価されている。志士たちの京都放火計画を挫いたこの強襲がなければ、明治維新のスケジュールは数年早まっていたという説すら存在する。血気盛んな若者たちの思惑が交錯した現場の緊迫感は、今なお歴史ファンの好奇心を刺激してやまない。