かつて、ものまねタレントといえば「声を似せる」ことが絶対の正義だった。その既成概念を根本から破砕したのが、はるな愛が見せた「リップシンク」という新境地だ。松浦亜弥のヒット曲『Yeah! めっちゃホリディ』のスピード感溢れるボーカルに、大柄で情熱的な体をシンクロさせるパフォーマンス。それは単なるギャグの域を超え、一種の観念的な表現へと昇華されていた。
しかし、ブレイクまでの道のりは決して平坦ではなかった。下積み時代、ショーパブの狭い舞台で客の視線を惹きつけるために試行錯誤を繰り返す中で生まれたのが、あの「エアあや」だった。声を完璧に消し去り、表情とダンスのディテールだけで原曲の熱量を倍増させて届ける。笑いと感動が紙一重で同居するその芸風は、泥臭い下準備と情熱の産物にほかならない。