大正期を扱う歴史漫画の系譜は、表現の幅を広げながらダイナミックな進化を遂げてきた。元来、この時代は『ハイカラさんが通る』をはじめとする講談社の少女向け作品において、ロマンチックな恋愛模様を描く格好のキャンバスだった。西洋のドレスと日本の伝統的な着物が混ざり合う華やかなファッションは、当時の読者にとって憧れそのものだった。
しかし、集英社が放った『鬼滅の刃』の登場によって潮目は大きく変わる。大正という「近代と前近代が同居する怪異の時代」をダークファンタジーや剣戟アクションの舞台へと昇華させたことで、男性読者や海外ファンまで巻き込む大メガヒットジャンルへと変貌を遂げた。この視点の転換こそが、漫画業界における大正時代の価値を再定義したのだ。