「読んだ後に嫌な気持ちになるミステリ」——いわゆるイヤミスというジャンルにおいて、本作の持つ位置づけはあまりにも強烈だ。家族の崩壊、密室のような地域社会、子供たちの間に漂う無邪気ゆえの残虐性。そこには救いようのない暗部が提示されつつも、ミステリとしての緻密な構造美が同居している。
叙述トリックの技巧としても、日本の文芸史に深く刻まれる完成度を誇る。伏線は目立つことなく、日常の会話や細部の情景描写の中にさりげなく潜まされている。真相が明かされた瞬間、それまで見えていた世界がガラガラと崩れ落ち、すべての景色が一変する快感と衝撃。それこそが、何千もの考察ブログや解説動画を生み出し続けている原動力だ。