「カニクレーン」という名称は、長野県に本社を置く建設機械メーカー前田製作所の登録商標です。その形状がカニの脚に似ていることから名付けられましたが、業界内では一般名詞として「ミニクローラクレーン」、あるいは海外市場で「スパイダークレーン(Spider Crane)」とも呼ばれ、世界中の特殊現場で高いシェアを誇っています。
一般的なトラッククレーンやラフテレーンクレーンは、車体自体の重量(カウンターウェイト)でバランスを取りながら吊り上げ作業を行います。しかし、狭小地に進入するためのミニクローラクレーンは、車体重量を極限まで軽量化(1トン〜3トン前後)しなければなりません。走行時の全幅をわずか600mm〜1,400mm程度に抑え、標準的なドアや狭い通路をすり抜ける設計になっているため、そのままブームを伸ばせば即座に転倒してしまいます。
そこで考案されたのが、車体の前後左右に配置された「4本の折りたたみ式アウトリガー」です。この脚をクモやカニのように四方へ大きく張り出すことで、極小の車体でありながら広大な支持多角形(接地面を結ぶ安定エリア)を形成します。ゴムクローラによってアスファルトやインターロッキング、軟弱地を傷めずに自走進入し、作業時には4本の油圧脚で車体を持ち上げて水平を確保する――この合理的な構造こそが、物理法則の限界を超えて狭所での重量物揚重を可能にしている理由です。