まずは言葉の基礎となる表記と本来のニュアンスを正しく押さえましょう。「昔取った杵柄」の読み方は「むかしとったきねづか」です。「きねがら」や「きねえ」と誤読される場面も散見されますが、正しくは「きねづか」と読みます。
言葉の意味は「過去に鍛錬して身につけた技術や腕前は、長い年月を経ても衰えず、いざというときに役立つこと」を指します。単に「昔覚えた知識がある」という受動的な状態ではなく、「かつて身体に叩き込んだ職人技や感覚が、ブランクを経てもなお鮮やかに蘇る」という身体性を伴う点が大きな特徴です。
この表現の由来・語源となっているのは、日本の伝統的な「餅つき」の風景です。「杵(きね)」は米を搗く重い木製の道具であり、「柄(つか)」はその握り手・持ち手を指します。餅つきにおいて杵を正確にコントロールし、息の合ったリズムでつき続けるには熟練の技術を要します。若い頃に一度その感覚(柄を握る感触と力加減)を身体で覚えた人は、何年、何十年と間が空いたとしても、再び杵柄を握れば自然と見事な手さばきで餅をつくことができます。この職人的な身体知の定着ぶりを巧みに例えたのが、この言葉の原点です。