極上の仕上がりを目指すなら、素材選びに妥協は禁物だ。農林水産省が公開する食肉の流通基準や栄養データからも分かる通り、牛肉の部位によって脂質含有量や筋繊維の密度は劇的に異なる。
牛丼に最も適しているのは、赤身と脂身がバランスよく層を成す「牛バラ肉(ショートプレートや牛バラ薄切り)」である。赤身肉だけでは煮込んだ際にパサつきが生じやすく、適度な牛脂(全体の30〜40%程度)が溶け出すことで、タレと肉汁が乳化して艶やかな舌触りが完成する。
また、調理前のひと手間として「熱湯にサッとくぐらせる湯通し(下茹で)」を行うと、余分なアクと酸化した脂が抜け、驚くほど雑味のないクリアな仕上がりになる。この一手間が、家庭料理とプロの仕事を分ける決定的な境界線となる。