1998年(平成10年)の音楽シーンを振り返ると、日本のポップミュージックの構造そのものが地殻変動を起こしたことがわかる。彗星のごとく現れた15歳の宇多田ヒカルが放った「Automatic」は、それまでのJ-POPのルールを根底から覆した。同時期にデビューした椎名林檎やaiko、MISIAといった規格外の才能たちが、こぞって独自の音楽性を開花させたのもこの年だ。
2026年の音楽トレンドにおいて、彼女たちの初期音源や、当時の制作手法を模した「90s R&Bリバイバル」が世界的な潮流となっている。AIが完璧なメロディを瞬時に生成する時代だからこそ、人間臭い揺らぎや、当時の荒削りなサンプリング技術が持つ「体温」が、かえって新鮮に響くのだ。ストリーミングサービスでは、当時のアルバムをあえてカセットテープにダビングして聴く若者が急増している。