寺院の中に本格的な温泉が存在する――この珍しい組み合わせこそが、一畑山薬師寺が年間を通じて多くの参拝客を引きつける最大の要因です。しかし、この温泉は単なるレジャー目的の温浴施設として作られたものではありません。
境内地下深くから湧出する天然温泉「御霊泉」は、飲泉も許可されている良質なラドン温泉です。仏教において水や湯で身を清める行為は「温室経(おんしつきょう)」にも説かれる伝統的な禊の作法であり、一畑山薬師寺では「ご祈祷によって心の穢れを払い、御霊泉で身体の穢れと病苦を洗い流す」という心身両面の浄化を提唱しています。
御霊泉を利用するには、基本的に本堂でご祈祷を受ける必要があります。つまり、入浴券をお金で買うのではなく、「ご祈祷の授与品(お下がり)」として入浴の機会が与えられるシステムになっています。この明快な信仰と癒やしの融合が、現代人の「日常から離れてリセットしたい」という心理的ニーズと合致し、根強いリピーターを生み出しています。