遺伝子が設計図であるなら、その設計図を「実際に読み込むかどうか」を決定するスイッチがエピジェネティクス(後天的な遺伝子制御機能)だ。
どれほど優れた知能関連のDNA配列を所有していても、強いストレスや著しい栄養不足、適切な知的刺激の欠如といった悪環境下に置かれると、遺伝子のスイッチはオフのまま固定化されてしまう。逆に、一見すると平均的な遺伝スコアであっても、適度な課題と安心感のある環境が提供されれば、脳の神経線維は驚くべき可塑性を発揮して成長を続ける。
遺伝子は決して個人の能力の「天井」を決定するものではない。それは特定の環境下でどのように反応するかという「反応の幅(レパートリー)」を示しているに過ぎないのだ。