従来の家族ドラマといえば、温かい団らんや小競り合いを経た和解が定番だった。しかし、山田太一が提示したのは、それぞれの秘密と嘘によって内側から脆く崩れ去る一家の姿だ。平凡な主婦の秘められた不倫、夫の浮気と仕事での不遇、子供たちの苦悩と反発。日常のすぐ下に潜む深淵を突きつけた。
だが、物語の本質は単なる家庭崩壊のショック療法ではない。家という物理的な基盤とアルバムに象徴される偽りの「思い出」が水害で完全に流し去られた後、残された家族がどのように自分自身の足で立ち直るのか。再生のプロセスにこそ、作品が投げかけた切実な問いが隠されている。