現代の人間関係におけるこの微細なズレを、鮮やかに切り取ってきたのが脚本家・坂元裕二の存在だ。東宝配給の大ヒット映画『花束みたいな恋をした』で有村架純が演じたヒロインの心情変化には、多くの観客が息をのんだ。価値観の一致から始まった恋が、日常の些細なすれ違いによってゆっくりと摩耗していく過程は、まさに現代のリアルそのものだ。
また、名作ドラマ『最高の離婚』でも描かれたように、一見平和な日常の陰で育まれる「諦め」は、ある日突然の決別文書となって現れる。坂元作品が突きつけるのは、言葉にされない感情の蓄積こそが、最も致命的な破局を引き起こすという冷酷な現実である。