この世界屈指の水底構造物が誕生したのは、前例のない試みに挑んだ技術者たちの執念があったからに他ならない。1990年代に推進された東京湾アクアライン海底トンネル建設プロジェクトは、当時の日本の土木工学における最高峰の知恵を集結させた国家級の大事業であった。軟弱な海底地盤を掘り進めるシールド工法と平行して、いかにしてトンネル内部への水漏れを未然に防ぎ、流入した水を安全に排出するかという技術的課題が徹底的に議論された。
当時の設計思想は現在も色褪せることなく脈々と生き続けている。構造体のジョイント部分に使われた特殊な防水シール材と、万一の漏水を逃さず捉える二重構造の勾配設計は、四半世紀以上が経過した今日でも完璧な気密性と安全性を保ち続けている。