ガチャピンの存在感を決定づけているもう一つの要素が、あの穏やかで人懐っこく、どこかマイペースな「声」だ。激しいスタントを平然とやり遂げた直後に発せられる「食べちゃいたいな」といった脱力感のあるセリフは、世代を超えて日本人の心に刻まれている。
放送初期から黄金期にかけてその命を吹き込んだのが、声優の雨宮玖二子だ。雨宮が作り上げた、少し鼻にかかった愛らしいトーンと絶妙な間合いは、恐竜のキャラクターに唯一無二の温もりを与えた。子どもたちに寄り添いながらも、時にムックをピリッと翻弄する絶妙な掛け合いは、彼女の卓越した演技力とアドリブから生み出されたものだ。
その後、2014年からは声優の鈴木真仁がその重責を受け継いだ。国民的アイコンの声が変わるという極めてプレッシャーのかかる交代劇でありながら、鈴木は雨宮が築き上げた情緒的なニュアンスを完璧に継承しつつ、現代的なテンポ感を巧みに注入。長年のファンに違和感を抱かせることなく、新しい世代のファンをも魅了し続けている。声優陣の確固たる実力こそが、着ぐるみに真の生命を宿らせているのだ。