かつて「米どころといえば新潟」という図式は絶対的なものでした。1990年代から2000年代初頭にかけて、新潟県と2位以下の収穫量には圧倒的な開きが存在していたのです。しかし、近年の新潟県のお米の生産量推移と北海道の収穫量を比較すると、両者の差はわずか数万トン規模にまで縮小しています。
このランキング変動を引き起こしている最大の要因は、地球規模の気候変動と、それに伴う栽培適地の北上です。新潟県をはじめとする本州の日本海側では、夏季の記録的な猛暑やフェーン現象による夜間の高温が頻発し、登熟期の稲に過度なストレスがかかる年が増加しました。その結果、白未熟粒(米が白く濁る現象)や胴割れ粒が発生し、1等米比率が大幅に低下する危機に直面しています。
対照的に、北海道はかつて「厄介道米」と揶揄された寒冷地のハンディキャップを完全に克服しました。温暖化による積算気温の上昇に加え、道立農業試験場が長年積み重ねてきた品種改良の成果が結実。「ゆめぴりか」「ななつぼし」「ふっくりんこ」といった極めて食味評価の高い品種が次々と誕生し、作付面積当たりの収量も飛躍的に向上しました。
さらに、北海道の強みは1戸あたりの経営面積の圧倒的な広さにあります。大規模なスマート農業機械の導入による低コスト化と安定生産体制が整っており、作況指数が「良」に振れた年には、統計開始以来初めて北海道が新潟県を抜いて生産量全国1位に躍り出るシナリオが現実味を帯びて語られるようになっています。