近年の長距離界において、偉大な二人の名を除いて歴史を語ることはできない。一人は哲学者のような佇まいでトラックと道路を支配し続けるエリウド・キプチョゲ。そしてもう一人は、流星のごとく現れてランニング界の常識を根底から破った若き天才、ケルヴィン・キプトゥムだ。
キプトゥムが2026年のシカゴマラソンで叩き出した2時間0分35秒という世界公認記録は、全世界に巨大な衝撃を与えた。彼の走りは、緻密にコントロールされたペース配分というよりも、圧倒的な心肺能力と爆発的なネガティブスプリットによる力押しだった。陸上競技の歴史において、この二人が見せた「極限の走り」は、後続の世代に新たな心理的バイパスを開いたのである。