日本のミュージックバーが持つ独特の美意識の源流を辿ると、戦後から脈々と続いてきた「ジャズ喫茶」の文化に行き着く。かつて作家の村上春樹が執筆活動を始める前にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を営んでいたエピソードは有名だが、店主が人生を賭けて組み上げた音響システムで客に音を浴びせるスタイルは、世界的に見ても極めて稀有な文化遺産といえる。
漫画『BLUE GIANT』に描かれるような剥き出しの熱狂を再現するため、名店と呼ばれるバーのカウンター奥には驚くべき機材が鎮座している。1950年代のヴィンテージJBLや英国名門タンノイのスピーカー、門外不出のマッキントッシュ製アンプ、そして徹底的にチューニングされたトーレンスやガラードのレコードプレーヤー。ハイエンドオーディオの粋を集めた空間では、サックスの息遣いやシンバルの微粒子のような余韻までもがリアルに立ち現れる。