彼女のルックスの進化を語る上で欠かせないのが、映画界の巨匠・岩井俊二監督の映画『キリエのうた』で主演を務めた際のビジュアル体験です。この作品で彼女は、ほぼノーメイクに近いすっぴん画像に近い素顔をスクリーンに晒しました。それまで「アイラインを引かないと外に出られない」とすら公言していた彼女が、生身の皮膚感、唇の血色、眉の毛流れをそのまま活かした演技に挑んだことは、彼女自身の美意識を根本から塗り替えるパラダイムシフトとなりました。
BiSH時代のメイクは、日本武道館やアリーナ規模の会場で最後列の観客まで感情を届けるための「舞台用デフォルメメイク」でした。黒のリキッドアイライナーで目尻を跳ね上げ、目のキワを黒く塗りつぶす手法は、彼女の持つアンニュイで涼やかな目元の魅力を覆い隠していた側面があります。
対照的に、最新のアイナ・ジ・エンドのメイクは徹底した「引き算の美学」に基づいています。アイラインは極細のインラインに留め、赤茶やモーヴ系のシアーなアイシャドウでまぶたに彫りの深さを演出。肌は厚塗りのファンデーションを排し、素肌の内側から発光するようなグロウな質感に仕上げられています。彼女がSNSで時折公開するオフショットのすっぴん風ビジュアルを見ても分かる通り、素顔のパーツ配置そのものはBiSH時代から何も変わっていません。変わったのは、自分の顔立ちの個性を肯定し、魅力を最大化するプロフェッショナリズムとヘアメイク陣の卓越したディレクションです。