東京や京都で大きな反響を呼んだ特別展『空也上人と六波羅蜜寺』は、この木彫像が持つ美術史的価値を広く世に知らしめる契機となった。会場に展示された木彫の細部を凝視すると、玉眼(水晶の義眼)に宿るかすかな光や、皮膚のたるみ、衣の皺に至るまで、驚くべき精度で表現されていることがわかる。
日本の仏教美術において、一瞬の動作や発声を静止画のように立体化した例は極めて珍しい。運慶一派が切り拓いた鎌倉彫刻の革新性は、写実的な肉体表現にとどまらず、精神的な叫びや祈りの響きそのものを木の中に閉じ込めた点にある。この展示を通して、多くの来場者が単なる古美術鑑賞を超えた圧倒的な存在感に圧倒された。