近代民俗学の祖・柳田國男はかつて、山中に暮らす異民「山人(やまびと)」への着目を通じて、平地民が異質な他者を異界のものとして畏怖・差別してきた構造を鋭く突いた。単なるおとぎ話の怪物ではない起源の謎をめぐり、日本民俗学会をはじめとする学術界では、歴史文献のデジタル解析や列島規模のフィールドワークを交えた再検証が急速に進展している。
漂着した外国人、ハンセン病などの難病患者、あるいは製鉄や木地挽きに従事した山窩(サンカ)。社会の共同体から疎外された周縁の人々が、いかにして「鬼」へと仕立て上げられていったのか。歴史の闇に葬られた正体と知られざる真相を紐解く試みは、単なる歴史探訪にとどまらず、共同体が異端を排除しようとする普遍的なメカニズムへの告発としても重い意味を持ち始めている。