ヒラメを捌く際、もっとも避けるべきなのは「迷いながら小刻みに包丁をノコギリのように動かすこと」です。身が柔らかく繊細なヒラメは、断面を荒らすとドリップ(旨味成分を含む水分)が流出し、食感も風味も著しく損なわれます。作業を始める前に、まな板の水気を拭き取る清潔なフキンと、刃を研ぎ澄ました包丁を用意することが第一歩となります。
基本となる下処理から骨から身を外すまでの工程は、以下のステップで進めます。
ステップ1:ウロコ取りと「すき引き」の選択
ヒラメのウロコは細かく皮膚に深く埋まっているため、金属製のウロコ取りで強く擦ると身が打撲状態になり、内出血を起こす原因になります。初心者であれば金タワシやペットボトルのキャップを使って優しく円を描くようにこそげ落とすか、プロが行う「すき引き(包丁を寝かせてウロコだけを皮ごと薄く削ぎ落とす手法)」を試みてください。包丁の刃をまな板とほぼ平行にし、尾側から頭側へ小刻みに刃先を滑らせていくと、身を傷めずにウロコ層だけを取り除けます。
ステップ2:頭と内臓の除去・血合いの徹底洗浄
有眼側(表側の黒い面)を上に向け、胸ビレと腹ビレの後ろを結ぶ線に包丁を「く」の字に入れて頭を切り落とします。続いて内臓を包丁の先で掻き出し、背骨の下にある血合い(腎臓)に薄く切り込みを入れて流水と歯ブラシで完全に洗い流します。ここで水分を魚体に残すと生臭さの元になるため、キッチンペーパーで腹腔内まで徹底的に水気を拭き取ることが不可欠です。
ステップ3:側線への入刀と5枚おろしの展開
ヒラメの中央には頭から尾にかけて一本の側線(背骨の位置)が通っています。ここに包丁を垂直に立て、背骨に刃先が「カリカリ」と当たる感触を確かめながら尾に向けて一直線にセンターラインの切れ目を入れます。次に、ヒレのキワ(エンガワの外周)全周に深さ2〜3ミリの浅いガイドラインを引きます。
続いて、中央の切れ目から外側に向かって、中骨の傾斜に包丁の刃の平らをペタリと沿わせるように寝かせ、骨を削ぐように少しずつ刃先を外周へ向けて滑らせていきます。背側・腹側をそれぞれ外すことで、表側(黒い面)から2枚のサクが取れます。魚体を裏返し、無眼側(白い面)も同様の手順で行うことで、「上身2枚+下身2枚+中骨1枚=計5枚」におろすことができます。