この異様な繁殖劇の引き金を引いたのは何なのか。気象データと生物の生息動態を照らし合わせると、地球規模の気候変動がもたらす歪みがくっきりと浮かび上がる。
環境省自然環境局の担当官は、厳冬期における平均気温の上昇と春先の早期昇温が、越冬昆虫の生存率を劇的に押し上げたと指摘する。従来であれば冬の寒さで自然淘汰されていた個体群が生き延び、そのまま繁殖サイクルへと突入した結果、世代交代のスピードが加速。爆発的な個体数増加を招いた。
環境衛生学を専門とする大学教授陣も警鐘を鳴らす。都市部のヒートアイランド現象と局地的な豪雨が水たまりや湿地帯といった理想的な産卵環境を無数に生み出し、天敵となる野鳥や小型捕食動物の捕食ペースを完全に上回ってしまった。生態系のバランスが崩れた今、都市そのものが巨大な孵化器と化している。