日本の大衆文化において、裏社会の装いを決定づけたのは映画の力だった。昭和の銀幕を彩った東映の任侠映画は、着流しにドスを忍ばせる前近代的な渡世人の姿を理想化したが、その幻想を無惨なまでに解体したのが深作欣二監督の金字塔『仁義なき戦い』である。
戦後の焼け跡と関西・広島の抗争を描いた同作で、スクリーンに溢れかえったのは汗と脂にまみれた開襟シャツや、粗野で幅広なラペルを持つスーツだった。様式美を捨て去り、生き残るために獰猛なエネルギーを放つ男たちのスタイルは、当時の若者たちに強烈なカウンターカルチャーの衝撃を与えた。
時を経て、この過剰なエネルギーを冷徹なミニマリズムへと反転させたのが北野武監督だ。映画『アウトレイジ』シリーズに登場するヤクザたちは、派手な柄シャツを脱ぎ捨て、漆黒や濃紺のストイックなテーラリングに身を包む。感情を排したビジネスライクな暴力。北野武が提示したその装いは、金融や政治の裏で暗躍する現代型組織の冷酷さを完璧に体現していた。