2000年代の日本のテレビ界において、パンくんの存在感は圧倒的だった。服を着て二足歩行し、おつかいをこなし、志村けんさんとまるで人間同士のように戯れる姿は、視聴者の心を掴んで離さなかった。日本テレビの看板番組だった『天才!志村どうぶつ園』の視聴率を牽引し、番組のアイコンとして君臨し続けた背景には、あまりにも巧妙なテレビ的演出と編集技術が存在していた。
だが、画面の向こう側の微笑ましい風景とは裏腹に、専門家の間では危険信号が灯り続けていた。成長したオスのチンパンジーは、人間の成人男性を遥かに凌ぐ筋力と凶暴性を秘めている。愛らしい「子供」から、力で縄張りを誇示する「成獣」へと変貌を遂げるプロセスで、現場にかかるプレッシャーは極限に達していたのだ。