一時期はレギュラー並みの頻度で登場し、春日部を大混乱に陥れていた酢乙女あいですが、シリーズが進むにつれて登場頻度が落ち着き、現在では「たまに登場するスペシャルゲスト」のような立ち位置に変化しています。この出番減少には、主に3つの明確な脚本・構成上の理由が存在します。
最大の理由は、「財力とSP(黒磯)の存在によるプロット破壊」です。クレヨンしんちゃんの日常回は、限られた予算や小さなトラブル、子どもたちの些細な思い違いからドタバタ劇が発展していくのが基本フォーマットです。しかし、酢乙女あいが絡むと「黒磯が札束やヘリコプターで即座に解決してしまう」あるいは「海外から一流の専門家を呼び寄せる」といった力技が可能になってしまい、日常ギャグとしての緻密な掛け合いが成立しにくくなる側面があります。
もう一つの要因が、「かすかべ防衛隊(5人)の黄金バランス」です。劇場版をはじめとする冒険・友情ストーリーにおいて、しんのすけ・風間くん・ネネちゃん・マサオくん・ボーちゃんの5人組は完成されたチームワークと役割分担を誇っています。ここに戦闘・移動・情報収集を一人で解決できる黒磯とあいが常時加入すると、チームのサバイバル感や危機感が薄れてしまうため、必然的に出番が絞られる傾向にあります。
実際、劇場版での本格的な活躍は『嵐を呼ぶ 栄光のヤキニクロード』(2003年)や『オタケベ!カスカベ野生王国』(2009年)などの一部作品での支援役に留まっており、あえて出番を限定することでキャラクターの特別感をキープしているのが実態です。