かつて全国の家庭に溢れた木彫り熊の多くは、昭和40年代〜50年代の観光ブーム期に大量生産された「鮭をくわえた熊」でした。しかし、現在コレクターやインテリア愛好家が血眼になって探しているのは、そうした量産土産品とは明確に一線を画すヴィンテージ木彫り熊です。
再評価の火付け役となったのは、ミッドセンチュリーデザインや北欧モダン家具を好む感度の高いインテリア関係者や美術コレクターたちです。無駄を極限まで削ぎ落としたミニマルな造形、ノミ一本で削り出された力強い陰影、手仕事ならではの温もり。これらがイームズやモーエンセンといった名作ヴィンテージ家具と完璧に調和することから、モダンな彫刻アートとして海外のアートディーラーからも熱狂的な視線を集めるようになりました。
さらに、美術展の開催や専門書籍の刊行が相次ぎ、「誰が、どのような思想で彫ったのか」という作家性が浮き彫りになったことで、木彫り熊の骨董品価値は一過性のブームを超え、確固たる美術ジャンルとして定着しています。