読書メーターやブクログ、大手書評サイトやSNSに寄せられた数千件規模のユーザーレビューを精査すると、朝井作品に対する読者の評価には際立った共通点が見出せます。
最も多く挙げられる声は、「五感に訴えかけてくる文章の質感」です。登場人物が口にする煮物の出汁の匂い、泥にまみれた草の青臭さ、絵の具の膠(にかわ)の冷たさなど、描写の解像度が極めて高いため、「本を開いた瞬間にその時代の空気が部屋を満たす」という感想が目立ちます。また、上方言葉を扱った作品では「テンポが心地よく、声に出して読みたくなるリズム感がある」と、読書体験そのものの快楽を指摘する声が多数を占めています。
一方で、手厳しい読者からは「美男美女の痛快な活劇を期待して読むと、登場人物の生々しいエゴや老い、死の描写に打ちのめされる」という意見も散見されます。しかし、この「綺麗事だけで終わらせない泥臭さ」こそが、多くの文芸評論家から「現代において本物のリアリズムを継承する稀有な書き手」と絶賛される理由です。嘘のない感情を描いているからこそ、物語の結末に訪れるわずかな救いや再生の光が、読者の涙腺を強烈に刺激します。