水前寺成趣園の見どころとして真っ先に挙げられるのが、池の周囲に広がる巧みな縮景の美学です。庭園全体が東海道五十三次の風景をモチーフに設計されており、歩みを進めるごとに次々と新しい景色が現れる回遊式庭園の醍醐味を堪能できます。
その中心として圧倒的な存在感を放つのが、美しい円錐形に整えられた富士山築山(ふじやまつきやま)です。緑鮮やかな芝生に覆われたこの山は、青空や池の水面と鮮烈なコントラストを描き出します。江戸時代、大名たちが参勤交代で行き来した東海道の象徴である富士山を熊本の地に再現した造形美は、計算し尽くされた遠近法によって実際の標高以上の壮大さを感じさせます。
池を一周する園路をゆっくり歩くと、京都の鴨川を思わせる流れや、東海道の宿場町を想起させる石橋・飛び石が随所に配置されており、散策そのものがまるで江戸時代の小旅行を疑似体験しているかのような知的好奇心を刺激します。