彼の代表作として真っ先に挙げられる「海景(Seascapes)」シリーズは、地球上の様々な海を均等な構図と圧倒的なディテールで捉えたものだ。空と海。画面の中央を突っ切る一本の水平線。そこには船も、建造物も、人間の気配すら存在しない。かつて地球上に初めて意識を持った人間が目にしたであろう景色――それこそが、彼がカメラのファインダー越しに追い求め続けてきた光景にほかならない。
一方、「劇場(Theaters)」シリーズでは、映画の上映時間全体にわたってシャッターを開け放つという独特の手法が用いられた。数時間の映画が1枚の写真に凝縮されたとき、スクリーンは眩いばかりの純白の光となって発光し、観客席の細部を静かに照らし出す。あらゆるストーリーやドラマが光の塊として中和されるそのプロセスは、時間の不可逆性と虚無を鮮やかに浮き彫りにする。写真という「時間を止めるメディア」を用いながら、時間の経過そのものを可視化する逆説的な試みは、世界のアート界に決定的な衝撃を与えた。