「マレッタ(荒波)」という言葉が示す通り、このパンの根底には南イタリアの厳しい海とともに生きてきた人々の知恵が息づいている。海水由来の天然塩と厳選された古代麦を使用し、水分量を極限まで調整しながら発酵させる独特のプロセスが特徴だ。外側は驚くほど香ばしく噛みごたえがあり、内側はもっちりとした濃密な小麦の旨味が詰まっている。
日本国内の食文化において、近年は空洞が多く軽い食感の生食パンブームが一巡した。その反動として、しっかりと噛み締めることで素材本来のアロマが広がるハード系ブレッドへの回帰が起きている。一口食べれば、口いっぱいに広がるのは塩気と小麦の澄んだ甘み。日常の食卓を一瞬で地中海の風が吹き抜ける空間へと変える力が、日本の消費者の心を掴んで放さない。