作家の遺志があったとしても、実務的な制作体制が伴わなければ連載の継続は不可能です。それを現実のものとしたのが、さいとう氏が1960年代から半世紀以上をかけて確立・洗練させてきた「徹底したスタジオ分業システム」でした。
一般的な漫画制作は、漫画家個人がプロットからネーム、主線(キャラクターの顔やペン入れ)を担当し、背景やトーン処理をアシスタントが補助する形をとります。しかし、さいとう・プロダクションでは映画の制作体制をモデルに、企画、脚本、ネーム、銃器・メカ描写、背景、人物の作画に至るまで、完全にセクション化された組織運営が行われてきました。さいとう氏自身は生前、全体のプロデュース、構成監修、キャラクターの表情チェックといった「総監督」の役割に専念していたため、現場には既に高度な作画技術と世界観を継承した職人集団が育っていたのです。
2026年現在のさいとう・プロダクションは、チーフアシスタント陣やベテラン作画スタッフ、専門のリサーチチームが有機的に連携し、さいとう氏の「文法」を寸分違わず再現しています。さらに近年では、さいとう・プロダクション名義で初となるスピンオフ作品の制作や、デジタルアーカイブ化など、新たな挑戦も意欲的に推進されています。