そして10年後の2014年。ステージに立った最高経営責任者(CEO)のティム・クックとボノは、人差し指を合わせるパフォーマンスとともに、新作アルバム『ソングス・オブ・イノセンス』を全世界のiTunes利用者に無料で提供すると発表した。対象は実に5億人以上。前代未聞のスケールだった。
だが、歓喜の声は瞬く間に困惑と不満へと変わる。iCloudの自動ダウンロード設定をオンにしていた世界中のユーザーのライブラリに、注文もしていないアルバムが突如として出現したからだ。ハードロックやオルタナティヴ・ロックに興味のない人々にとって、消去の仕方もわからない楽曲がスマートフォンを占有する状況は、侵略行為にも似た不快感を与えたのだった。