自らの存在を「穢れた血筋」と蔑み、心の扉を閉ざしていた伊黒にとって、恋柱・甘露寺蜜璃との出会いは暗闇に差し込んだ唯一の救いでした。彼女の天真爛漫さ、食事を美味しそうに頬張る無邪気な姿、そして誰に対しても分け隔てなく注がれる純粋な優しさは、伊黒が幼少期に奪われ続けてきた「人間らしい温もり」そのものでした。
伊黒が蜜璃に緑色の縞のニーハイソックスを贈ったエピソードは有名ですが、彼は決して自らの想いを押し通そうとはしませんでした。なぜなら伊黒の心中には常に、「鬼のいない平和な世界で、もう一度人間に生まれ変われたら、その時は好きだと伝えよう」という痛切な誓いがあったからです。
自らの血を呪う伊黒にとって、蜜璃は「今世で軽々しく触れてはならない神聖な光」であり、だからこそ彼女を守るためならば自らの命を羽毛のように軽く差し出す覚悟を決めていました。最終決戦における二人の共闘と、最期に交わされた来世の契りは、鬼滅の刃という作品における最大のカタルシスとなっています。