完全寛解を機に、笠井氏のキャリアには新たなライフワークが加わりました。その筆頭が、全国各地の自治体、大学病院、医療系学会、企業などからオファーが殺到している笠井信輔 講演会です。登壇テーマは多岐にわたり、「がんサバイバーとして学んだ生きる知恵」「治療と仕事の両立」「情報発信がもたらす心の処方箋」など、自身の実体験に基づいた一次情報が聴講者の心を揺さぶり続けています。
笠井氏の講演が他の医療講演と決定的に異なるのは、30年以上のテレビ放送で培った圧倒的な話術と取材力です。自らの絶望や失禁の恥ずかしさ、抗がん剤治療中の生々しい苦痛すらもユーモアを交えて語り、会場を涙と笑いで包み込みます。「病気になって失ったものばかりに目を向けがちだが、病気になったからこそ出会えた人や気づけた縁がある。それが『引き算の縁と足し算の縁』だ」というメッセージは、多くの患者やその家族にとって暗闇を照らす灯火となっています。
一方で、アナウンサー本来のフィールドである映画評論や舞台鑑賞の解説、情報番組へのコメンテーター出演も衰えを見せません。自らの病を特別なものとして特権化することなく、大好きなエンターテインメントの面白さを全身で伝える姿は、彼が単なる「がん闘病の語り部」にとどまらず、プロのジャーナリストであり一流のエンターテイナーであることを鮮烈に証明しています。