東のすまし汁×角餅に対し、西の白味噌×丸餅。この決定的な分水嶺は、江戸時代における武家社会と公家社会の文化差にある。江戸の町では、武士の「敵をのす(伸ばす)」という掛け言葉から切り餅が好まれ、さらに人口急増に伴って一度に大量生産できる角餅が主流となった。汁も醤油ベースのすまし汁で、手早く作れることが重宝されたのだ。
一方、関西では餅を一つひとつ手で丸める丁寧な手間を惜しまなかった。煮崩れしにくい丸餅を茹で、濃厚でとろみのある白味噌の汁に合わせる。具材も「丸く収まるように」と、大根やニンジン、里芋まで輪切りにする徹底ぶりだ。焼き目をつけて香ばしさを出す関東の角餅に対し、関西では餅を焼かずにそのまま茹でて柔らかく仕上げる。この対照的な仕立てにこそ、東西の歴史と美意識の違いが鮮明に表れている。